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妄想商会(10)~黒水晶〈第1話〉~*特殊アイテム

皆様こんにちは…おなじみのシルクです。
私はご存知のように魔界と人間界を渡り歩く貿易商人を生業にしております。
魔界ではタバコのように、人間の欲望エネルギーが嗜好品としてよく売れます。だから、私は人間界で魔界の力を駆使して人間の欲望エネルギーを集め、それを魔界にて交易しています。

この街は人間のインモラルな淫欲が渦巻いていますので、時としてとても質の高いエネルギーが得られます。私はそのエネルギーを小さなカプセルに詰めて、魔界で売り歩くんですよ。これが驚くほどの人気で売れるのですね。
いつもは私の店にその淫欲を提供してくださる方をお招きするのですが…どうやらちょっとトラブルを起こしかけている人がいるようですので、ちょっとこちらから足を運んでみますかね…。



その喫茶店は、駅前の繁華街から少し離れたところにポツンと店を開いていた。
かといって、寂れた閑散とした雰囲気ではなく、けっこう繁盛しているのだ。それもほとんどが若くセンスのよい女性の上客ばかりである。
その訳は、この店のマスターにあった。
この店のマスターである板垣聡史は、元々空間デザインの草分け的な存在として時折雑誌にも顔を見せていた人物で、その自分の技術を用いた趣味の一つとして喫茶店を始めたのだ。
その空間芸術のセンスに惹かれて、口コミで多くの女性客が集まる場所にまでなっていた。
今では聡史も喫茶店事業が面白くなっているようで、デザイナー業そっちのけで喫茶店にいりびたっている。

それにはもう一つの理由があった。
どんな社会的成功者でも人間的に弱い部分はあるもので、実は聡史は大の盗撮マニアでもあったのだ。故に自分の喫茶店のトイレにカメラを仕掛け、日毎女性たちのプライバシーを覗き見ていた。
聡史自身も設計にも携わっていたので、そのあたりは抜かりなく、カメラの隠しスペースも用意しており万全の態勢であったのだが、悪事は暴かれるもので…。
遂にその時が訪れてしまった。

もう閉店間際の閑散とした店内で仕事帰りに立ち寄った女性客一人が最後の客であった。
二人いる女性従業員も先に上がらせ、聡史一人が集計仕事をしていた。
「こんな時間まですみません。ちょっとお手洗いお借りして帰りますね」
「いえいえ。どうぞどうぞ、もう私しかいませんので、ごゆっくりしてくださって結構ですよ」
そんな他愛もないやりとりを交わし、その女性客はトイレへと入っていき、それを見送る聡史はもう手馴れた悠然とした手つきで、遠隔操作のビデオカメラのスイッチをオンにした。
その顔には、いい獲物がかかった時のハンターのように妖しい笑顔を漂わせながら…。

しかし次の瞬間、その悠然さが一気に硬直した。
「キャーッ!」
トイレから先ほどの女性客の悲鳴が聞こえ、慌しく駆け出してきた。
「ちょっと!どういうことですか!何でトイレにカメラが仕掛けられてるんですか!説明してください!」
予想もしていなかった展開である。
絶対に見つからないであろう場所に隠していたのに…多分この女性客は用を足している最中に、あちこちいじりまわしていたのであろう。不自然なタイルのはめ込み方と、そのタイルだけ磨りガラスのように材質が違うことを見抜き、触ってみるとなんとタイルが外れ、中からカメラが出てきたのだ。そのカメラは電源が入ったままで、明らかに用を足していた女性の股間部分に焦点が合うように設置されており、タイルと思っていたものは、なんとマジックミラーになっていたのである。明らかに覗きの確信犯的証拠であろう。

「説明してください!私のことを盗撮しようとしていたのですか!ひどい!許せない!警察呼んでください!!」
あまりの女性の剣幕に、聡史もたじろぐばかりである。なにせ状況証拠と物的証拠が揃いすぎている。この場で警察を呼ばれたら…これまで築き上げてきたキャリアも地位もこの店も全てが無に帰してしまう…。そんな焦りと恐怖で、聡史は身体全体で大汗をかきながら、必死で女性をなだめようとするばかりなのである。
しかしそんな聡史の努力も空しく、女性は携帯を取り出し110番を押そうとしていた。
「(もうダメだ…)」
そう思いかけた刹那…。

……………。

一瞬にして静まり返る店内…いや店内ばかりではなく、外の雑踏すら聞こえてこないような完全なる静寂…。そして目の前の女性に目をやると、なんと携帯を見つめたままの状態で身動き一つしなくなっていた。
「(なんだ…これは!?)」
この状況変化に思考がついていかない。そーっと女性の肩を押してみた。びくともしない…。
「(こ、これって…時間が止まっているのか!?)」
ようやくその思考にたどり着いた時、さっきまで誰もいなかったはずのカウンター席に、黒いシルクハットをかぶり、黒いマントを羽織った妖しげな男が座っていることに気付いた。


「お困りのようですねぇ」
その妖しい男が怪しい笑みを浮かべながら話し掛けてきた。完全なる静寂の中での発言なので、さほど大きくない声でもハッキリと聞き取れる。
しかしその不自然な状況に、またもや聡史は返す言葉を失っていた。
「ハハハ…驚かせてすみませんね。いえね、こちらも少々慌てましたので、何の前触れもなく時間を止めさせていただきましたよ。危なかったですねぇ」
「!!…じ、時間を止めたって!?…じゃ、じゃあ、この状態はアンタがやったのか!?」
「ええ、そうですよ。今この世界で動いているのは、人間界ではアナタだけでしょうねぇ、板垣聡史さん…」
「!!!…なんで俺の名前を!?アンタ…誰なんだ!」
「これは失礼。申し遅れました。私はシルク…魔界と人間界を渡り歩く貿易商人です。どうぞよろしく」
「ま、魔界!???」

まるでSF映画の中のような台詞に、ますます聡史の困惑の度合いが高まっていく。
「ええ、聞いたことありますでしょう。魔界という言葉くらい」
「し、しかし…(いきなりそんなこと言われたって…)」
「おや、信じられないですかねぇ…この時間が停止している状況にいても。でしたらお邪魔なようですので、時間を戻して私は立ち去りましょう」
「!!…ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「フフフ、やはり今この状況を放っておかれたら困りますよねぇ…信じてもらえます?」
「わ、わかった。信じるよ…た、ただ…アンタはここへ何しに来たんだ?まさか俺を助けてくれるというのか?」
「ええ、そうですよ。魔界の善意…でね。私と取引をしてくださるなら、あなたを守って差し上げますよ」
「取引!?」
「ええ…。私はあなたのその強力な淫欲が欲しいのです。あなたがこの先、その淫欲をさらに発揮してくだされば、私はその淫欲のエネルギーを魔界で売りさばくことが出来るのです。いい儲けになるんですよ。魔界の住人たちは、人間の欲望エネルギー…特に淫欲から出来るカプセルをタバコのように好んで常用しますのでね…。協力してくださるのなら、この場をお助けし、その上であなたの淫欲をさらに発揮できる環境つくりのお手伝いをしますよ。まぁ、言わば儲ける為の投資ですねぇ」

聡史はいきなり突きつけられたその話に、正直迷いに迷っていた。
突然現れた魔界の住人と取引しろと言われても、この先何が起こるのか…これは夢かもしれないという思いまで込み上げてくる。
「迷う必要もないでしょうし、迷っている場合じゃないと思いますよ…このピンチでは…ね」
それもそうだ…今を何とか乗り切れるなら、悪魔にでも魂を売ろうではないか!聡史の決意は決まった。
「よ、よし。取引に応じよう」
「ありがとうございます。では、まずこの場を切り抜けましょう。その後でゆっくりとご相談をしましょうね」
そう言って、シルクは携帯を見つめたままで彫像のように固まっている女性客の頭に手をのせ、意味もわからない聞いたこともない言語のようなものをブツブツと唱えた。
直後…シルクの手がボーッっと怪しい緑色の光を放ったかと思うと、すぐに消えた。
「これで大丈夫でしょう。これから時間を戻しますが、この方はさっき起きたトラブルのことは一切記憶に残していませんので、ご安心下さいね。おいしいコーヒーを飲んで、トイレでスッキリして帰ろうとしているところです。時間を戻した後も、私はここに立っていますが、魔界の結界内におりますので、この方には私のことが見えません。いいですね?」
「あ、ああ…」
聡史は今だ半信半疑であったが、胸を不安で高鳴らせながら時間が戻る瞬間を待つしかなかった。

……………。

「あ、マスターさん、こんな時間まですみませんでしたぁ。でも、このお店、すごく雰囲気よくて気に入りましたよー。また来ますね!」
「え!?…あ、あ…ハハ…はいはい、是非またお越しくださいね…」
先ほどの怒りの剣幕とはまるで正反対の態度に、危機回避からの安堵と奇跡への驚きでしどろもどろになりながらも、何とかその女性客を見送った。

「いかがですか?よかったですねぇ。ピンチを切り抜けることが出来て」
「す、すごい…これが現実のことなんて…」
「どうです?ここまでくれば、いい加減信じてもらえますか?」
「あ、ああ…もう疑いようもなくアンタの言ってることと力を信じるよ」
「フフフ…ありがとうございます。では、取引の内容をご相談しましょうかね」
それからしばらくの間、聡史とシルクは密談を交わした。

しばらくしてようやく密談が終わり、
「いやぁ、聡史さん…アナタの欲望の深さと大きさには驚きました。よろしい、その全てに支援をしましょう」
「ほ、本当に?」
「ええ、まずこのお店を改装しなければならかったですね。改装のための資金もご用意しますよ。私にとって人間界のお金など、何の価値もありませんのでね。たくさんあるところから持ってくるだけですから、ご安心くださいね」
「あ、ああ…(それってどっかからくすねて来るってことか…)」
「それから、肝心なものを用意しなければなりませんが、それは改装後ということで…ではちょっとお待ちくださいね」
そう言った途端、シルクの身体がまるで空気に溶け込むように消えていった。

それから程なくして、再び空気の中から浮かび上がってきたシルクは、重そうなケースを抱えており、その中にはなんと、改装には十分すぎるほどの紙幣が入っていた。
「こ、これって…使っても問題ないお金なのか?」
「ええ、後で調べようとしても調べられないようなところから運んできましたので…全く問題ありませんよ」
「す、すごいね。魔界の力って…」
「ですかねぇ…まぁ、人間界では出来ないことはないってことくらいは確かでしょうけどねぇ…では、計画通りに改装が済んだときにまたお会いしましょう」


2ヵ月後…。
ようやくに計画通りの改装が完了した。
小さなビルの一階部分だけの店舗であったものが、都合よく二階も空き店舗になっていたので、上下をエレベーターで繋ぎ、二階建て店舗に改装しなおしたのだ。
改装が成った店舗内で、一人佇んでいたとき、
「ようやく終わりましたね…いい感じじゃないですか」
いつ来たのか、シルクが立っていた。
「ああ、お陰さまでね」
「では、これがアナタの欲望を叶えるアイテムです」
そう言って、シルクはカウンターの上に蓋の開いた箱を置いた。中には黒光りしている宝石のような石が、いくつも入っていた。
「これは?」
「これは黒水晶ですよ。人間界では黒水晶は“降魔鎮邪”の貴石として特別視されていて、陰の氣の吸収・浄化にかけてのスペシャリストなどともてはやされておりますが、本来は魔界の石なんですよ。人間界での邪念をたくさん吸収した黒水晶は、ものすごい魔のパワーを持っておりましてね。これらはかなり熟成された石たちです」
「へぇ…で、これをどう使えば?」
「ええ、今夜一晩、これをアナタの寝床の下に敷いて寝てください。それでこの石たちはアナタの淫欲を共有するようになります。その後、これらを一つずつ、この店の全ての角に置いていってください。それで完了です。そうすることで、ここには魔界の結界が引かれ、この中ではアナタはその淫欲のままにしたい放題ができますよ…フフフ…」
「それは…すごい…」
「それでは…アナタの淫欲が最大限に放出されることを期待しておりますよ…ゴキゲンヨウ…」
シルクはそう言い残して、いつものように空気に溶け込んでいった。

いよいよ…待ちに待った計画の実行である。
もうこれまでのようなチマチマした危うい橋を渡るような変態行為など、しなくてもいいのである。

(黒水晶<第2話>に続く…。)

テーマ : 官能小説 - ジャンル : アダルト

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……(-.-)

新章もうれしいのですが…
自分は、

まずは、マイルームにケリをつけたほうが、いいんじゃないのかなあ…

って感じるのですが…。


ナマ言ってすみません(^^ゞ

新作も最高!

ものすごくいい展開!今から2章がとても楽しみです。更新を毎日チェックしにきまーす。

皆様、コメントありがとうございます!
マイルームのご催促…ごもっともです^^;;
アイデアがまとまって、創作意欲が湧いてきたら、執筆復活したいと思っております^^;
もうしばしお待ちくださいませ~^^;;
とりあえず…妄想商会の新作を頑張って書いていきます~^^

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